わたしのマトカ
わたしのマトカ
片桐 はいり
幻冬舎 2006-03
マトカとは、フィンランド語で旅のこと。あとがきにあたる、”旅のおわりに”という項に、そう書いてあった。
片桐はいりさんが、”かもめ食堂”の撮影で一ヶ月滞在したフィンランドでの出来事をつづったエッセイ。文章を書くことには自信がない、というようなことが書いてあったけれど、とても文才のある人だなぁーと思う。凝ってはいないんだけど、独特のテンポと独特の文章。次から次へと読みたくなる。
海外を旅するのが好きらしく、フィンランド以外の旅の話も出てくる。はいりさんらしい旅のスタイルで、普通に観光地をめぐるだけとは違う。現地の人との交流を、とても楽しんでいる。
さて、フィンランドのお話。撮影中の話はそう多くはない。フィンランドの町がどうとか、景色がどうとか、そんなことよりも、人の話が多いように思う。フィンランドの人はとてもシャイらしい。しかし、ひとたびこちらが話しかけると、赤い顔して、ものすごくフレンドリーになるらしい。なんだか憎めない。
印象的だったのは、”余裕、という武器”という言葉。
フィンランドの人は、温和だそうで、映画のスタッフに関しても、日本では怒号が当たり前のところ、フィンランドでは、まったくそんなことはないそう。そして、一日8時間と労働時間が決まっていて、のんびりと撮影が行われる。
そんなフィンランドから、せわしない東京へ戻ってきた。東京では、例えば電車で、イラッとすることが起こったりする。割り込みとか、足を踏んだのにあやまらない人とか。しかし、そこで、仕返しするでなく、”余裕”をもつことが勝ち。ゆっくりとした時間の流れるフィンランドから、そんな心まで持ち帰ったようで。
片桐はいりさんの本をたくさん読みたい。またエッセイを出してくれないかな。

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